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往年の名車をバーチャル空間へ
Hondaと取り組んだ、アナログ資産を未来へつなぐ空間コンテンツ制作の新たなワークフロー

ソニー XYN 空間キャプチャーソリューション プロダクトマネージャー 内海直人、本田技研工業株式会社 Honda Motanionプロジェクト 事業開発責任者 土井 侑翼 様、株式会社BaseHub 3DCGディレクター 近藤 紘和 様

 

ソニーは、本田技研工業株式会社(以下、Honda)の新事業開発部と協力し、同社の過去製品を3DCGアセット化する検証プロジェクトを実施しました。車両をバーチャル上で展示する試みにソニーの「XYN 空間キャプチャーソリューション」を用いることで、3Dデータが存在しない 歴史的な名車をいかに精度高く再現し、メタバース等の新ビジネスへつなげられるか。コンテンツを活用し、いかにHondaファンのエンゲージメントを高めていけるか。  

今回は、Hondaの土井氏と、制作を担った株式会社BaseHubの3DCGディレクター 近藤氏に、本プロジェクトの過程と成果についてお話を伺いました。


1948年の創業以来、二輪から四輪、ジェット、ロボットまで、多様なモビリティを世に送り出してきたHondaはいま、製品価値をバーチャル空間にも拡張する新事業「Honda Motanion(ホンダ モタニオン)」の検証を進めています。

honda_motanion

Honda Motanion(ホンダ モタニオン)


その鍵となるのが「過去の名車のデジタル化」です。今回のプロジェクトでは、Hondaの歴史を象徴するバイク『CB750Four』や『NSR250R』を3DCGアセット化し、VRChat上での展示を試みました。

この背景には、Hondaが大切にしてきた「Heritage(継承)」への強い想いがあります。土井氏は、伝統を受け継ぐ中で感じていた発信のあり方について、こう語ります。

 「Hondaでは、過去製品の多くをエンジンが動く『動態保存』の状態で保管していますが、実際にお客様にその動く姿をお見せできる機会は限られていました。こうした製品をバーチャル空間で再現し、物理的な制約なく世界中のお客様に『触れて・動かして』体験していただく。そうすることで、これまでのファンの方はもちろん、Hondaをまだ知らない方々にも、私たちのモビリティの価値を楽しんでいただきたいと考えています」  

 
Honda『NSR250R』の実車

  
“僕自身もホンダのバイクが大好き。
お客様も昔乗っていた自分のバイクを、デジタルでもう一度所有できたらすごく嬉しいよねと“ 
―Honda 土井氏


 

写真からの「推測」に頼らない、効率的な制作の土台

今回のプロジェクトは、単なる車両のデジタルアーカイブとは異なるものでした。実車をそのまま写し取るのではなく、実在感を保ちながら再構築する必要があります。

しかし、数十年前に製造された製品の多くには、現代のような3D設計データが存在しません。バーチャル空間で「触れて動かせる」ほどのリアリティを実現しようとする試みの前には、アナログ資産ゆえの制作コストや再現性の限界という大きな課題がありました。

実車の設計図や3Dデータが残っていない車両の場合、従来の手法では、残された写真資料のみを頼りに、ゼロからモデリングを行うフルスクラッチの工程が必要不可欠でした。
土井氏は「写真から形を起こすと実際の寸法とのズレが生じやすく、修正を繰り返すなど工数がかさむ傾向にありました」と語り、近藤氏も、作業者の視点から「レンズの歪みや光の影響で、そのままトレースするだけでは説得力のある立体になりません。パーツごとにモデリングしては組み立て、全体のバランスを調整するという試行錯誤に多くの時間を要していました」と、図面がない中での「正解の定義」の難しさを強調します。

 

“歴史的モデルを、当時を知る方にも違和感なく見てもらえるクオリティでデジタル空間に持ち込む。その制作プロセスにおいて、フォトグラメトリがどの程度実務に活かせるのかを試せる機会だと感じていました“ 
―BaseHub 近藤氏

 

既存技術の課題を越える、精緻な再現への挑戦

近藤氏は、これまでもフォトグラメトリ技術を制作に活用し、その有用性を感じていました。しかし、実務への本格導入には慎重な理由がありました。 
「単純なフォトグラメトリのみでは、細部の再現性や品質の安定性に課題がありました。暗所や複雑なパーツでデータが不安定になり、結局その後の調整コストが大きくかかってしまう。そのため、精度を担保するために別途3Dスキャンを併用するなど、複数の手法を組み合わせて補完し合う必要があったんです」

  

そこで解決策として導入されたのが、ソニーのXYN 空間キャプチャーソリューションです。従来手法では難しかった金属光沢や細部を比較的高精細にキャプチャーできる点に強みを持つこのソリューションを、精緻な3DCGアセットを作り上げるためのベースモデル資料の取得ツールとして活用しました。

実際にXYN 空間キャプチャーソリューションで取得したデータを見た近藤氏は、その進化を次のように評価します。

「従来のフォトグラメトリでは面が荒れやすかった車体下部や細かいケーブル類などの再現性が、明確に改善されていると感じました。大きな破綻や欠損が少なく、全体としてメッシュの安定感が向上しており、技術として一段階進んだ印象を受けました」

 ▼ 空間キャプチャーソリューションで撮影し生成したHonda『NSR250R』 の3DCGアセット
 

  ▼ 実際に3DCGコンテンツ化したHonda『NSR250R』

 

ソニー 空間キャプチャーソリューション プロダクトマネージャーの内海は、空間コンテンツ制作の新たなワークフローが提示できるのか、本ソリューションがクリエイターの方々にとって使いやすいソリューションなのかを検証すべく、今回のプロジェクトに参画しました。



“工業製品の中にはデジタル化に取り組みたいものの、中々実現に至らないという課題を聞いていました。今回の検証では『空間キャプチャーソリューションの強みを活かして、いかに新たな3DCGアセット制作のワークフローを作り出せるか』が狙いでした“
―ソニー 内海直人

 

現場での使いやすさと、クリエイティビティの転換

質感の再現性に加え、運用のしやすさも大きなポイントでした。撮影を担当した近藤氏は、空間コンテンツの撮影を支援するスマートフォンアプリケーション「XYN Spatial Scan Navi Beta」  の利便性に触れます。今回は再撮影が難しい環境でしたが、アプリケーション上で取得範囲を可視化しながら進められたことで、撮り漏らしの不安なく確実に作業を完了できました。
 

  
 XYN Spatial Scan Navi Betaを使用して実車をキャプチャー


さらに、高品質な3DCGアセットを生成する「XYN Spatial Scan Beta」はクラウド上で処理が完結するため  、特別な機材環境を整える手間が少なく、既存のフローへスムーズに取り込めた点も、制作進行上の大きなメリットとなりました。
近藤氏は、実制作の中での変化をこう語ります。
 「これまでの制作では、写真資料から立体関係を確認する『構造の検証』に多くの時間を割いていました。今回はその工程が大幅に整理されたことで、ディテールの作り込みや、当時の存在感を再現するための仕上げ調整に、より多くの時間を充てられるようになりました。制作時間の配分そのものが変わった感覚です。」

「すべてを自動化する技術というよりも、制作の土台を安定させることで、より効率的にクオリティを高められる。おかげで、完成度を高める工程にエネルギーを注げるようになりました。」
制作の出発点が「推測」から「取得済みの形状」に変わったことで、クリエイターはより本質的なブラッシュアップにリソースを集中できるようになりました。


テクノロジーの力で、まだ見ぬ「体験」を形に

今回のプロジェクトを通じて、アナログ資産を迅速にデジタル空間へ展開する具体的な手法が確認されました。Hondaはこの成果を、今後のビジネス展開へとつなげていく構想を持っています。
土井氏は、今後の展望について「バイクや車だけでなく、研究施設やテストコースなど、通常は立ち入りが難しいエリアの空間再現なども検討しています」と述べ、バーチャルならではの没入感のある体験を通じて、お客様と共に新しいモビリティの楽しみ方を模索していきたいと語りました。



“空間キャプチャーソリューションは、クオリティ高くデジタル化ができる、本当に魔法のようなソリューションだなという風に感じました“
―Honda 土井氏



今回の事例をモデルケースとして、今後も現実のオブジェクトを3DCGアセットへ変えていく新たな制作ワークフローを提案していきます。制作の効率化やビジネス展望の実現、その先にある真の価値は、これまでコストや技術的な制約で諦めていたアイデアが解き放たれ、クリエイターがより自由に表現を広げられるようになることです。

ソニーのXYNはこれからも、高品質でフォトリアルな3DCGアセットを創り出し、空間コンテンツとして活用するワークフローをサポートしていきます。