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Hakuten Open Studio 2025|ソニーのディスプレイが拓く、体験デザインの新たな可能性

2025年12月10日~13日に開催された 「Hakuten Open Studio 2025」 にて、株式会社 博展のクリエイティブ展示の一環として、空間再現ディスプレイ(ELF-SR2)と視線認識型ライトフィールドディスプレイ(参考展示)を出展しました。
本展示では、単に3D映像を「見る」だけでなく、空間・光・触覚・身体の動きを組み合わせることで、ディスプレイそのものを空間体験の一部として捉える新しい表現が紹介されました。
本レポートでは、展示を手がけた テクニカルディレクター 久我氏、クリエイティブエンジニア 石田氏、デザイナー 白銀氏のコメントを交えながら、ソニーのディスプレイがもたらす空間体験の可能性をご紹介します。

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左からクリエイティブエンジニア 石田氏、テクニカルディレクター 久我氏、デザイナー 白銀氏

展示ブースのご紹介
視線認識型ライトフィールドディスプレイ(参考展示)|「モニター」を感じさせない、空間と一体化した体験設計

視線認識型ライトフィールドディスプレイは裸眼で立体映像を視聴できる手のひらサイズのディスプレイです。このディスプレイを用いた展示でまず印象的だったのは、来場者がそれをディスプレイとして認識しない点でした。制作チームが重視したのは、ディスプレイの持つ立体表現の強みを生かしながら、モニター感を消すこと。ディスプレイとして意識された瞬間に体験が現実に引き戻されてしまうため、造作・光・配置を含めた空間全体での工夫を行い、空間にそのまま絵が浮き上がるような体験が追求されていました。

展示のテーマは「ウサギの住み家」。
木製のボックスが複数重なるように配置された空間の中に、2台のディスプレイが仕込まれています。来場者がボックスに近づくと、立体で表示されたウサギが現れ、そのウサギとのインタラクションを光や触覚を通じて体験することができます。

立体表示されたウサギは、単に画面の中に「表示されている」のではなく、そこに存在しているかのようなリアリティをもって家の中を動き回り、来場者の動きに応じて反応します。

白銀氏(デザイナー)
「立体がすごい、で終わってしまうとモニターに戻ってしまう。今回は、最初からモニターとして見せないことを強く意識していました。その為に木枠や光の調整を行い、ウサギがまさに目の前にいるリアリティを設計したことで、空間そのものを作品とした展示が実現しました。」

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複数の木箱から成るウサギの住み家。ウサギが自由自在に動き回り、それぞれのディスプレイから顔を出す。

視覚・光・触覚を組み合わせた、拡張された体験

本展示では、ディスプレイによる立体映像に加え、照明の動きや触覚(ハプティクス)、体験者の身体の動きによるインタラクションを組み合わせることで、視覚以外の感覚にも訴える体験が設計されました。

触覚体験としては、ボックスの中に体験者が手を入れると、ウサギがその手からご飯を食べる感覚を楽しめるというもの。ウサギの毛並みやヒゲを思わせる質感や、舌が当たったときのわずかな湿度感まで表現され、「そこに生き物がいる」と感じられる没入感が生まれています。

また、ボタン操作などの装置的な体験ではなく、体験者がウサギの前でジャンプをすると、それに合わせてウサギも画面の中でジャンプをするという、体験者の身体の動きそのものがインタラクションになる体験が実現されました。

石田氏(クリエイティブエンジニア)
「ボタンやセンサーが見えると、人は操作する装置として見てしまう。
空間再現ディスプレイに内蔵されたセンサーを活用して、日常の動作のまま、自然に体験が起きる状態をつくりたかったんです。」

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箱に手を入れてウサギにご飯をあげることができる。ウサギの舌やヒゲが手に当たる感覚はとてもリアル。

来場者の反応|驚きから、感情が動く体験へ

会場では、展示を見た瞬間に足を止める来場者が多く見られました。中にはウサギの実在感からそれがディスプレイに表示されているものであることに気づかないケースも。

中には、“昔一緒に暮らしていたウサギを思い出し、感傷的になった”など、体験を通じて強く心を動かされたという声もあり、技術的な驚きにとどまらず、感情に訴えかける体験として受け取られていることが伺えました。

久我氏(テクニカルディレクター)
すごいですねで終わらず、“実際に目の前にいるようでワクワクした”など体験者の感情が動くところまで持っていけたのは、今回の展示で一番手応えを感じた点です。ただ、ここまで心を動かす展示にできたのは、ひとえに空間再現ディスプレイのリアリティが高いことが要因だと思います。まずはリアリティの高いディスプレイがあったことから、まさにウサギが“そこにいる”展示ができたと考えています。」

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ディスプレイの中にたたずむウサギ。体験者がジャンプをすると、ウサギも跳ねる姿には愛おしさも感じる。

空間再現ディスプレイ(ELF-SR2)|「立体表示」から一歩先の、“現象”を体験する表現へ

27インチの空間再現ディスプレイ(ELF-SR2)でも、同様に裸眼で立体視を行うことができます。空間再現ディスプレイのコーナーでは、一般的な3D表示のデモにとどまらず、“現象そのものを体験する”ことをテーマにした表現が試みられていました。

来場者が体験するのは、空間再現ディスプレイがバスの車窓となり、バスの中から街並みを覗く体験です。視線の先には、街並みが立体的に広がりますが、この体験の本質は「奥」にある風景だけではありません。来場者が息を吹きかけると、手前にある窓が曇るという現象が起こります。その瞬間、来場者は「奥に世界がある」だけでなく、「手前にも窓が存在していた」ことに気づかされます。この「手前に何かがあった」という驚きこそが、今回のELF-SR2の立体演出をうまく生かした、核となる体験でした。

石田氏(クリエイティブエンジニア)
「ディスプレイは、どうしても目的ベースで使われがちです。今回は何かを見せるより、何かが起きる体験や現象そのものをつくりたかった。今回のHakuten Open Studio 2025の来場者の多くが最新テクノロジーや立体表示に慣れていることを踏まえ、単なる立体に見える表現ではなく、自分のアクションと視覚の変化が結びつくことで生まれる、直感的で新しい体験をデザインしました。」

この展示では、体験者のほとんどが、まずは裸眼のまま広がるバーチャルリアリティの世界とその技術に対し、思わず「すごい」と声を漏らします。その後、息を吹きかけたような窓が現れた瞬間、「えっ、窓がある!」「指で字が書ける」「雫(しずく)が垂れてきた」と大きな歓声が上がります。そこからは、バスの車窓からの角度や縮尺に緻密に合わせこまれた風景に完全に没入し、いつまでも座って眺め続ける。それがモニターではなく「本物の窓」であると完全に受け入れていく体験者の皆さんの姿は非常に印象的でした。

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バスの車窓からのぞく風景。息を吹きかけると、曇った窓ガラスが突如手前に出現する体験はまさに驚き。

空間再現技術で、体験デザインの未来をひらく

Hakuten Open Studio 2025での展示を通じて、空間再現ディスプレイおよび視線認識型ライトフィールドディスプレイは、単なる映像表示デバイスではなく、空間体験を構成する要素としての可能性を示しました。

XYNは今後も、空間再現技術を軸に、クリエイターやパートナーとともに、エンタテインメントやブランド体験、展示表現など、さまざまな分野で新しい価値創出に挑戦してまいります。

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■プロジェクトクレジット
株式会社博展
-    クリエイティブエンジニア    石田 将也  
-    テクニカルディレクター     久我 尚美  
-    デザイナー           白銀 香奈美 
-    プロダクトマネジメント     山中 麻由佳 
-    木工制作            羽柴 郁也
-    触覚デザイナー         吉原 悠人

株式会社博展 Webサイト: https://www.hakuten.co.jp/

 

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